ボーダー・コリーの繁殖の危険性とカラーへの誤解

今回は、ロッシュで定番のカラーとなっているレッド&ホワイトやマールのコートカラーのボーダー・コリーの繁殖に関する知識についてです。

専門的になり過ぎて一般の方向けで無い内容になってきました。
記事中に記載のあるeeやEE、MM,Mmといった因子記号については”カラー因子に関する記事”を後日公開し、その後一般の方々にも出来るだけわかりやすい情報として整理していきます。

考察の経緯

日本に限らず、

  • レッドホワイトとレッドホワイトをかけてはならない
  • レッドホワイトとマールをかけてはならない
  • チョコとチョコをかけてはならない
  • ブラックが基本だから、ブラック因子が濃ければ濃いほど良い
  • 色ものは遺伝子が劣化する

等、”カラーが薄くなる”あるいは”因子が薄くなる…?”等と完全な誤解をされているブリーダーさんが本当に多くいらっしゃいます。
実はこれら、科学的根拠は全くありません。ほとんどが経験則であったり、噂や都市伝説の類で話が広がったものと考えられます。
こういった話は海外の情報を集めていても一定数そう考えている方がいるようで、私の周囲だとブリーダー歴が長い方に限ってそうおっしゃるケースが多い気がします。

私たちも、先輩ブリーダーの方々から上記のような助言を受けることが多々ありましたが、どなたに理由を尋ねてもはっきりと明確な答えが一度も出てきませんでした。遺伝学の知識がついてきている中で、そういった理由のわからないタブー説がどうしても気になり、日本には全くといっていいほど情報がないため、今回は海外の情報をメインに集めてきたものをまとめています。

レッドカラーが危険という誤解と正しい知識

レッド&ホワイトは犬が本来持っている他のカラーを完全に覆い隠す

劣性eeレッドカラーの犬には、必ず知っておかなければならないブリーディング時の注意点があります。

セーブルと劣性eeレッドの交配は危険ではなく、セーブルとeeレッドマールもそれ自体は全く危険ではありません。 これらの2つの色の問題は、それらがフェオメラニンでできており、マール模様がフェオメラニンの上に発現できないことです。これは犬を見た時に外見からマールの確認が不可能になり、ブリーダーの無知によって無意識にマール(M)をマール(M)に交配させ、ダブルマール(M/M)の遺伝子を持つ子犬を最大25%程度の確率で作り出してしまう可能性があります。 そのため、マール因子とeeレッドの親を交配することによって生まれる子犬は、前述したブリーダーの無知によるダブルマール作出を防ぐため、その子犬の将来の繁殖を禁止する処置が必要であると考えます。

ダブルマールの遺伝子を持つと、各細胞への色素沈着が正常に機能しなくなり、色素を必要とする器官の成長を阻害することに繋がります。ダブルマールの遺伝子を持って生まれた犬は重度の聴覚障害、視力障害などの先天性欠損症が発生する事がよく知られています。ここでは画像掲載を控えますが、是非調べてご確認ください。

劣勢eeレッドはオーストラリアンレッドとも呼ばれ、劣勢という字はメンデル遺伝法則に基づく優性/劣性の意味であり、優性に対して特徴が現れにくいという意味での劣性という表現です。決して優性に対してee遺伝子が劣っているといった意味ではありません。

マールすらも覆い隠すeeレッド|マスキング遺伝子

前述の劣勢ee レッドについて少し掘り下げます。

ユーメラニン(黒・茶系)によって着色されただけの犬は、表面にマールが発現する為、見た目がマール模様になり見分けが簡単です。しかしeeレッドの犬では、ee因子による他のカラー因子(S:ホワイトを除く)全てに対して優性に作用する(犬が持つ本来のカラーを上書きする)現象が起こるため、事実上そのeeレッドの犬がマール因子を持つかどうかを見分けることは不可能になります。ただし、マスキング効果は毛包にのみ発生し、鼻や肉球、唇といった部位は影響されません。 マール因子を持たないeeレッドであることを確認するには、遺伝子検査が最も確実です。そのほか、マール因子は所謂隔世遺伝が出来ない(Mをキャリア出来ない)ため、eeレッドの当該犬の両親のいずれか片方にマールカラーの犬が存在しない場合はその子犬がマール因子を受け継ぐことはありません。 ただし、両親犬のいずれかにeeレッドの犬がいる場合、その犬がeeレッドでマールをマスクしている可能性があるため、さらにその上の世代にマール(M)因子を持つ親犬がいないことを確認する必要があります。

また、同様にクリアセーブル(ただのセーブル)の犬もマールをマスクする性質があります。

eeのマールへのマスキング効果について:

正確にはマール因子(M)はユーメラニン色素(黒・茶)にのみ影響を与えるため、結果的にeeを持つ場合に発現するフェオメラニン色素による赤系カラーへはマールとして影響できずにバッググラウンドに潜んでいる状態になります。 ちなみに、マールはフェオメラニン(赤系)には作用できないのになぜレッドマールの子がいるの?と疑問が出てきます。 これはそもそも、マール自体がeeレッドにマスクされたマール因子を持つ犬のことを指すものです。つまり、レッドマールという「いわゆるレッドにマールが入った模様」柄自体は存在せず、科学的にレッドマールというカラーそのものが発現した模様というものは存在出来ません。

当犬舎では、KINAKODUFFY(里帰り出産)がeeレッド因子を持ちます。 上記の通り、これらのeeレッドカラー因子を持つ子をマール因子を持つ父犬に交配した際に販売する子犬は、誤った知識のもとその先の世代でダブルマールの子犬が作出されてしまうリスクを排除するため、繁殖の禁止(去勢証明の提出)を条件として血統書のお渡しをしています。

マールの親から生まれたレッド&ホワイトの犬自体はいたって健康ですが、DNA未検査で繁殖ラインに加える行為は極めて危険です!

暗い色=優れた遺伝子という誤解

冒頭で述べた通り、ボーダー・コリーに限らず犬全体で見た場合でも、暗い色(例えばブラックが基本カラーの犬)以外は遺伝子が劣化してその後のカラーや性格・パフォーマンスに影響が出るといった事に、現時点では全く生物学的根拠はありません。チョコレートとチョコレートや、レッドホワイトとレッドホワイトを掛ける場合でも、これらのカラーを決定付けるには様々な修飾遺伝子が作用してそのカラーを発現するものですが、それらの遺伝子が相互に影響することで問題が起こる例は前述したダブルマール(M/M)の組み合わせのみで、遺伝上の問題は起こり得ないという事です。

ではなぜブラックや基本のカラー以外の薄い色を排除しようとする動きが出るのかというと、いくつかの理由が考えられます。

1. グレーコリー症候群

これはラフコリーなどに診断される、血中の好中球が減少するTNSに似た症状が現れる病気で、発症した動物の皮毛が灰色になることから関連付けられて一定の誤解が生じた可能性があります。

2. 色希釈脱毛症

ブルー(ブラックの希釈)やライラック(チョコレートの希釈)の希釈カラー遺伝子を持つ犬に稀に発症する疾患で、ドーベルマンで重症な症状が多いもので、ボーダー・コリーでは特に極めて稀です。

3. 劣性遺伝の形質に未知の形質が現れる可能性

生物学の一般的な見解として、劣性遺伝によってこれまでに見られなかった劣性遺伝因子同士の影響による病気を含む未知の形質が発現する可能性があります。これは、劣性遺伝子が稀な存在であり、自然の交配では滅多に表に出てくる存在ではないため、祖先の個体が少数からなると考えられ、その少数の個体の好ましくない劣性遺伝形質が何代も後となった現在の個体に発言してしまう可能性があるという仮説です。
同じ理屈は優性遺伝でも成り立つと思われますが、その動物の大多数が本来持っていた形質は優性遺伝するものであるため、祖先を遡っていった場合の遺伝子プールの個体の絶対数が数が劣性遺伝子とは異なります。祖先が少数=祖先の血が濃くなるという理屈です。

4. 国内のパピーミルによる犬質悪化

これは国内のあるトップブリーダーの方から得た情報です。
ボーダー・コリーが日本に輸入され始めた初期、その後の国内の繁殖ラインはペットショップやオークションに出荷する繁殖業者と、手売りのみを行うシリアスブリーダーの大きく二つに分かれました。その後、犬質を無視した珍しいカラーや子犬の個体数を最優先する繁殖事業者によってブラック以外のカラーボーダーコリーが積極的に量産された結果、カラーボーダーは質の悪い犬が多い=カラーはダメ といった論調が生まれたと考えられます。

以上いくつかの可能性をあげましたが、これらの情報から考察すると、いずれも優性BLACKのブラックボーダーが一番優れていて、その他のカラーボーダーコリーがそれに劣っていると言うにはあまりに乱暴な結論と言えます。劣性レッドカラーのよく誤解されている部分を含め、大部分は単なる無知の誤解から生じているものです。唯一論理的に成り立つものは「劣性遺伝の未知の形質が発現する可能性」ですが、単に合理的な可能性であって、統計が存在して証明されているものでもありません。

ただ、「4」の国内の繁殖ラインの話はかなり危険で、こうして生み出された攻撃的であったり容姿の崩れた犬が増えすぎた場合、特定犬種全体のその後の質が悪化していく結果に繋がります。ペットショップでの子犬購入はお勧めしません。

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